「不動産投資は税金対策になる。」との営業トークを聞いたことのある方はおおと思います。
この意味は、不動産投資による賃貸事業の運営は給与所得と損益通算が出来るので、不動産賃貸業で損を出せばその分を給与所得から差し引けるので税金対策になるという事です。
利益を得ようとして行う不動産投資で損を出すというデメリットが、税金対策というメリットになるという点が分かりにくいと思います。
結論から言ってしまえばバラ色のいい事ばかりの税金対策は不動産投資では出来ません。
以下の私の持つマンションの数字を例にとって考えてみましょう。
物件価格1000万円の物件を20年ローン(金利2.4%)で設定します。
物件価格 | 1000万円 |
固定資産税・都市計画税 | 30,000円 |
管理費(月8,000円) | 96,000円 |
修繕積立金(月1,000円) | 12,000円 |
火災保険料(5年 22,000円) | 4,400円 |
減価償却 | 100,000円 |
利息(20年平均) | 130,000円 |
元本弁済(20年平均) | 500,000円 |
利回りがとんでもなく低くないと税金対策は出来ない!
不動産賃貸業で損をだすという事は利回りが低くないと出来ません。ではどの位の利回りの物件で税金対策効果が出るのかシミュレイションしてみましょう。
先ずはわかりやすい様に現金で一括購入した場合からです。
現金購入の場合、表面利回り2.4%以下の物件で税金対策効果がでる。
現金一括で上記例の物件(マンション)を購入した場合は、月々の金利と元本弁済の支払いがありません。従って収入は賃料収入、支出される経費は以下になります。
固定資産税・都市計画税 | 30,000円 |
管理費(月8,000円) | 96,000円 |
修繕積立金(月1,000円) | 12,000円 |
火災保険料(5年 22,000円) | 4,400円 |
支出合計 | 142,400円 |
減価償却 | 100,000円 |
減価償却込み経費計 | 242,400円 |
税金対策のキモとされる実際のキャッシュアウトがないのに経費計上責る減価償却を考慮した支出は年間242,400円です。
税金対策をするには利益が出てはいけませんから、年間の収入を242,400円以下にする必要があります。よって月々の賃料収入を20,200円以下に設定して初めて損が出ます。
この場合の表面利回りは2.4%です。実利回りは減価償却を考慮しせず計算しますと実利回りは1.0%です。
ここまで利回りを下げて税金対策を優先して不動産投資をする必要があるでしょうか?絶対やめた方がいいと思います。
ローンを使って利息も経費計上したら表面利回り3.7%以下で税金対策できる。
不動産投資ローンを利用した場合、例のマンションで考えますと利息は経費計上できますので、支出は下記になります。元利均等弁済の20年ローンなので利息と元本の割合は逐次変化しますので、利息は20年の平均値を入れています。
固定資産税・都市計画税 | 30,000円 |
管理費(月8,000円) | 96,000円 |
修繕積立金(月1,000円) | 12,000円 |
火災保険料(5年 22,000円) | 4,400円 |
利息(20年平均) | 130,000円 |
支出合計 | 272,400円 |
減価償却 | 100,000円 |
減価償却込み経費計 | 372,400円 |
支出が372,400円ですので収益はこの金額以下にしなければならないので月々の賃料は31,000円以下に設定すると税金対策効果でます。
この場合の表面利回りは3.7%です。実利回りは減価償却と利息を考慮しせず計算しますと実利回りは2.3%です。
税前の手元にはローンを使っても使わなくても減価償却分の10万円しか残りません。
税金対策可能な利回りでは元本弁済さえままならない厳しい状況に!
不動産投資ローンを利用している場合、元本弁済が必要になります。本例の場合は年間50万円です。
上記の例では減価償却の10万円以外は実際に出ていくお金ですので約27万円の支出が年間であります。。そして収入は節税効果現れる月々31,000円ですから、約37万円年間であります。
その差額は10万円です。元本弁済は利益から行いますので残った10万円から行います。
よって年間で40万円のマイナスになり手元資金からお金を出して銀行へ弁済する事になります。
更に税金対策効果を狙えば損失を大きくすればいいので、賃料を下げます。するとこの手元資金のマイナスが40万円から賃料をさげたぶんどんどん膨れ行きます。
毎年40万円以上手元資金が減っていくのは、利益を得るためにおこなっている不動産投資の意味が全くありませんし、債務不履行のリスクさえあります。
元本弁済までして手元資金が減らないラインとは?
この例で行けば経費+利息+元本弁済=772,400円です。従って賃料が年間772,400円つまり月々64,000円の賃料で丁度元本まで支払えます。
例にしている私が保有するマンションの実際の賃料は60,000円ですので月々手元資金4000円を使って自分の資産を増やしている現状です。。
節税目的で物件を選んではいけません。
皆さんは元本弁済をどの位にするかキャッシュフローを検証し、支払い可能な範囲で物件を購入してください。
コチラの記事もご参照ください。「不動産投資に失敗しないコツ!まずキャッシュフローをチェックしよう!」
得られる税金対策効果がリスクに比して小さい!
所得税率は累進課税です。税率は330万を超えた収入で20%、965万円を超えて23%、900万円を超えて33%です。
不動産投資で損失を出して給与所得からマイナスがでてどの位のメリットがあるでしょうか?
税率23%考えますと以下の表になります。
不動産投資の損 | 税効果 |
10万円 | 23,000円 |
50万円 | 106,000円 |
100万円 | 230,000円 |
不動産投資で100万円も損失をだして税金対策出来るなら、その分不動産投資事業自体が危機的に厳しい状況という事になります。これはやってはいけません。
10万円程度のマイナスで得られる効果は年間23,000円です。ここにこだわるほど大きな数字ではありません。
いずれにしても節税目的で不動産投資をする事にあまり意味はないのです。
節税対策よりも不動産投資で、きっちり利益をだす事を第一に!
不動産投資を行っているのですから、その事業で利益を出すというスタンスでやっていかなければ、とんでもない低い利回りで物件を買う事になったり、運営のモチベーションも下がるので、お勧めしません。
不動産事業の利益を第一に事業をする事をお勧めします。
法人を設立する事でのメリットなど利益へのモチベーションの下がらない方法もご紹介していますので、参考にしてください。
副業で不動産投資をやるなら法人設立!メリット、デメリットとは?