共有名義の不動産売却をする時はどの様な点に注意すればよいでしょう。
共有名義の不動産売却をする場面では、共有者が必ずしも円満な状態ではない可能性があります。
共有名義を持つ人たちの関係が円満ではない状態の場合は、小さい不満や不備にも相手方は猛反発してくることが多くトラブルがどんどん大きくなります。
ここでは共有名義の不動産売却の注意点とその前段階である共有名義の不動産を保有している状態のでの注意点もあわせて解説して、トラブルの無い共有名義の不動産の処分する為の知識を解説したいと思います。
共有名義の不動産を保有しているときのトラブル回避の知識
共有名義の不動産に関するトラブルを防ぐには簡単な法律知識があると便利です。法律知識というと難しそうに聞こえますが、そうでもありません。
私の経験上、法律知識を理解するには条文そのものを読むことが一番が早いです。
法律の条文というと敬遠しがちですが、現在は非常に読みやすい文章で記載されていて、条文は要点を端的にまとめてあるので内容を理解するのも早くなります。
共有名義の不動産に関する重要条文は4つしかありません。
共有名義の不動産に対して行動を起こす時は下記の条文をまず読んでみて下さい。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をする事が出来る。
民法251条 共有物の変更
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加える事が出来ない。
民法252条 共有物の管理
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
但し、保存行為は各共有者がすることが出来る。
民法253条 共有物に関する負担
各共有者は、その持分に応じ管理の費用を支払、その他共有物に関する負担を負う。
共有者が1年以内に前項の義務を履行しない時は、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することが出来る。
共有不動産の使用は単独で出来るが、応分の賃料を請求される事も!(民法249条)
民法249条(共有物の使用)について説明すると、条文記載の様に各共有者は共有不動産の全部を使用できます。但し条文の後半部分で持分に応じたとの記載がありますので、共有不動産を共有者の数人が使用したいとなった場合は、建物全体を一人で使用する事は出来なくなります。部屋ごと分けて概ね持ち分割合と等しくなる形で共同で使用してくことになります。
又、単独で共有不動産を使用していた場合、他の共有者の利用する権利を独り占めしている状態になるので、応分の賃料を請求される事例もあります。
◎共有不動産を一人で利用している場合➡一人で利益を受けているので賃料など請求される可能性がある。
共有不動産の変更は共有者全員の同意が必要!では変更とは?(民法251条)
民法251条(共有物の変更)について説明します。共有不動産の変更については共有者全員の同意が必要とされ、その「変更」とは以下の様な事が考えられます。
○賃貸借契約(長期又は自動更新される契約)
○共有不動産の解体
○抵当権等担保権の設定
共有不動産が売却又は解体さればそのものがなくなってしまいますし(処分)、長期の賃貸借契約を締結すれば共有不動産は賃借人に利用されてしまう為、共有者は全く利用できなくなります(使用の制限)。
更に抵当権を設定されてしまえば債権者(抵当権者)の意見を聞かずに共有不動産を売却出来なくなります(権利移転の制限)。これらは全て共有物の使用や権利に制限をかける行為です。
共有不動産の管理は持分割合の過半数で可能。保存行為は単独で出来る。(民法252条)
民法252条(共有物の管理)について説明します。共有不動産の管理と保存とはどのような事を指すのでしょうか。管理とは価値上々の為にする行為と事務手続き、保存行為は価値を維持する為にする行為と大まかに言えるでしょう。共有不動産にどの様な行為が出来るか具体的に見ていきましょう。
管理行為は共有持ち分の過半数の同意で出来ます。
過半数の同意が必要とされているのは、価値向上のためにする行為も全ての共有者にとって価値向上となっているかは個人差があるからです。例を挙げます。
○短期で自動更新の無い賃貸借契約の締結や解除
保存行為は単独でする事が出来ます。
単独で出来るとされているのは現状を維持する為に必要な行為を迅速に行えるようにする為です。例を挙げます。
○掃除
○不法な占有者の追い出し
共有物は共有者で管理する責任があります。費用負担も収益の配分も共有者で分担。(民法253条)
民法253条について説明します。収益と費用負担について定めています。
共有不動産からの収益を持分に応じて分配を受ける権利もありますが、反対に管理等に要する負担も共有者分担しなければなりません。
費用負担の方をほったらかしにしていると思わぬ費用の請求を受けたり、条文上持分の買取請求を受ける可能性もあるので注意が必要です。
共有不動産は誰か一人にまかせっきりにしたり、ほったらかしにないようにしましょう。
共有不動産の売却は正に共有者全員の同意が必要な場面です。
ここまで共有不動産に対して共有者が出来る行為、その為の同意の要件を見てきましたが、共有不動産の売却はまさに変更にあたり、共有者全員の同意が必要な場面です。
円満に共有者が話し合える場面ではトラブルは起きにくいのですが、離婚や相続争い等で共有者が円満には話し合えない場面も多くあります。
この様に円満な状況ではなくても法律上共有不動産を売却するには共有者全員の同意が必要です。
この様な場合にも出来るだけスムースに共有不動産を売却出来る為の注意点があります。
共有不動産の売却時は最初の4つの取り決めが重要です。
共有不動産を売却する際は以下の事を最初に決めておきましょう。共有者で円満に話し合えない状況でも話自体はスムースに進んでいくはずです。
②共有不動産売却諸経費の負担割合
③売却を依頼する不動産会社
④意思決定の方法及び場所
①と②はセットで考えます。売却代金から得る金銭と支払う諸費用の支払いの分担を決めておきます。多くの場合持ち分割合になるともいます。共有不動産売却時の手取金額は以下の様に売買代金から諸経費を引いたものです。
③売却ルートは必ず整理して売却活動をしてください。各共有者が勝手ばらばらに業者に依頼すると話がこじれてまとまらなくなります。全員で合意した不動産会社のルートのみで売却活動をしてください。もし知り合いの不動産会社がいればそれはも先に共有者に話してルートに組み込むようにしてください。
④意思決定の方法を決めて下さい。「手取り額が最も多くなる買主に売却する」等計算値判断でき、機械的に感情無しに決定できる意思決定方法を定めておくと良いでしょう。そして場所は全員が集合して意思決定する等を定めておけばトラブルや感情の対立で売却が遅れる事のなくなるでしょう。