繰り上げ返済の実際の効果?期限の利益を放棄するメリットはあるのか?

不動産投資に際して銀行借入を行っている方は毎月の賃料収入から経費と利息に加えて元本返済を行うと手元にお金が中々残らないと思います。

そこでローンを繰り上げ返済して利息と元本弁済の支出を減らして賃料収入が手元に残る様にしたいと考える方は多いかもしれません。

繰り上げ返済するにはお金が必要なので手持ちの資金から繰り上げ返済する事になります。

つまり手元にある余裕資金の使い道(投資先)について「繰り上げ返済」選択しているという事です。

果たして手元資金の使い道として繰り上げ返済が最も効率がいいのでしょうか?

この観点から繰り上げ返済を考えたいと思います。

繰り上げ返済を手元資金の使い道として選択した場合の効率は?

例として以下の条件で10年目で繰り上げ返済する場合でシミュレイションしてみましょう。

【月次収支】 賃料60,000円 
       管理費等支出後の手残り 45,000円
       銀行返済        44,862円
       銀行返済後の手残り     138円
【借入金額】 1000万円(フルローン)
【借入期間】 25年
【借入金利】 2.5%

この条件での支払い内訳表は下記になります。

返済は

元利均等払い月々44,862年間538,340万円を銀行に支払います。

25年間で約350万円の利息を支払い「期限の利益」を手に入れる事になります。

10年経過した時に繰り上げ返済する事を考えます。

年次利息元本年間返済額残債
1年目246,673291,667538,340971万円
2年目239,297299,043538,340941万円
3年目231,735306,605538,340910万円
4年目223,981314,359538,340879万円
5年目216,032322,308538,340847万円
6年目207,881330,459538,340814万円
7年目199,524338,816538,340780万円
8年目190,956347,384538,340745万円
9年目182,171356,169538,340709万円
10年目173,164365,176538,340673万円
11年目

163,930

374,410538,340635万円
12年目

154,461

383,879538,340597万円
13年目

144,754

393,586538,340558万円
14年目

134,800

403,540538,340517万円
15年目

124,596

413,745538,340476万円
16年目

114,133

424,208538,340433万円
17年目

103,405

434,935538,340390万円
18年目

92,406

445,934538,340345万円
19年目

81,129

457,211538,340300万円
20年目

69,567

468,773538,340253万円
21年目

57,712

480,628538,340205万円
22年目

45,558

492,782538,340155万円
23年目

33,096

505,244538,340105万円
24年目

20,320

518,020538,34053万円
25年目

7,220

531,120538,340無し
合計3,458,50210,000,00013,458,502 
返済内訳及び残債(元利均等払い)

削減する利息金額を利益と考えた時の利回りは?たったの1.3%にしかならない。

10年目に繰り上げ返済をする場合は、残債673万円を弁済する事になります。

そして残りの15年分の利息の合計135万円(年間平均に直すと 135万円÷15年=9万円)を節約する事になります。

673万円の支出によって得られる利益は支払うべき金利年間平均9万円を支払わなくてすむ事です。

よって

年間9万円の削減分をリターンに見立てると、効率(利回り)は9万円÷673万円=1.33%になります。

不動産投資の利回りに比べてもかなり低い利回りに感じませんか?「期限の利益」を放棄までして得られるメリットとは思えません。

手元資金を673万円減らして、年間54万円のインキャッシュを優先?に惑わされない!

673万円で繰り上げ返済を行うと銀行への返済が無くなるので、物件から入るキャッシュは月々148円から、月々45,000円に増えます。

月額44,862円手取りが増えたので、年間で538,344円のキャッシュインが673万円の支出で入ることになります。

この様に書くと673万円で年間約54万円入ってくるので54万÷673万円=8%と考えていいようにも見えます。そうすると効率もよく手元にお金も入ってくるので何となくいい話に感じます。

これは間違いです。

しかし手元にあった673万円が無くなっている事を忘れないでください。

673万円手元に残して、年間45万円づつ資産が増えることを優先した方がGOOD!

繰り上げ返済しなかった場合、残りの15年で残債が表の様にどんどん減っていき最終的にはゼロ円になり、1000万円の物件がまるまる負債の無い形で、自分の資産になります。

つまり繰り上げ返済せずにそのままにしておけば賃料で残債の673万円が15年後弁済されるので、

673万円÷15年=年間約45万円のペースローンの元本弁済という形で資産が増えていきます。

繰り上げ返済した時は54万円のキャッシュインでしたから、結局メリットとしては54万円-45万円=年間9万円の資産増加(メリット)しかないのです。

つまり手元資金673万円を利回り1.3%のリターンに使う事と繰り上げ返済は同じ事なのです。

結局、年間平均9万円の利息の削減にしかならず、利息の節税効果を考えると更に効果なし!

更にこの年間平均9万円を利息として支払うと経費計上出来ます。よって利益に対して課税される所得税などを軽減する効果(課税利益が下がる)があります。

しかし繰り上げ繰り上げ返済してしまうと、利息が無くなりますので、利息を経費計上出来なくなります。仮に実効税率30%とすると、年間で3万円多く納税する事になります。

よって節税効果も加味するとメリットは年間平均で6万円しかありません。

節税効果まで考えると、

効率は6万円÷673万円=0.9%の利回りになり、手元資金673万円をこの様な効率のわるい事に使用する事はないと思います。

繰り上げ返済する資金があれば、別の投資に回す!「期限の利益」は放棄しない方がいい!

長期ローンを組めている物件があればいずれローンを返済し全てが自分の資産になります。であればそれはほっておいて今ある繰り上げ弁済出来る資金があるのであれば、それは別の投資に使った方が効率的です。

例にあった673万円が手元にあれば、不動産投資にまわして、それぞれフルローンを組んで物件を取得し諸経費を673万円から捻出すれば10物件程度不動産投資規模を大きく出来ます。

利回り0.9%の繰り上げ返済と比較すればリートや投資信託の方が利回りがいいのでそちらの方がいいです。

つまり「期限の利益」を放棄して繰り上げ返済する事は非常に効率の悪い投資と言えます。

期限の利益を放棄せず、手元にある資金を有効に利用して、不動産投資であれば規模の拡大などを目指す事をおススメします。

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