不動産投資をする時に「サブリース」という言葉を聞いたことがあると思います。マスターリースという言葉もありますが、ほぼ同義で建物を借りて、その借りた建物を貸す契約形態の事を指します。(他人の物件を借りて貸すつまり又貸しです。)
最近はシェアハウスの「かぼちゃの馬車」がサブリースで大きな問題となったことで、問題の多い契約形態と感じている方も多いかと思います。
又は、問題はあるけどサブリースを受託する業者次第という感覚を持っている方もいるかと思います。
不動産投資は事業ですので、あいまいな感覚ではなく、ある程度の知識を身につけたうえでサブリースの業者と打ち合わせをして判断することをお勧めします。
ここでは判断要素となる知識をお話ししたいと思います。
前提としてサブリース会社のビジネスモデルを理解してください。
サブリースには2パターンあります。1つはトータルプロデュース的なサブリースで1棟アパートやマンションを設計・建築の段階からコンサルティングして、そのままサブリースをするケースです。こちらは建築段階から借主がサブリース会社と決まっているので賃料が直ぐに入ってくるので安心と考える方がいます。もう一つは、建築工事等には絡まず、出来上がっている投資物件の区分マンション等を1室ごとサブリースするケースががあります。
それぞれ収益の構造は下記の様になります。
〇建築からコンサルティングするサブリースの場合
- 1棟建物の建築コンサルティング費
- 1棟建物の建築費の中間マージン
- サブリース賃料と実際の賃料との差額
1棟建物の建築費の中間マージンとは、サブリース会社が我々から建物建築を請け負い、サブリース会社が建築会社に建物建築を発注した時の、我々から支払われる建設費とサブリース会社が建築会社に支払う建設費の差額の事です。
このタイプのサブリース会社はこの建築にからむコンサル費用やマージンでほとんどの利益を上げています。
裏を返せば建築が完了した時点で利益確保はほとんど終わり、後のサブリース事業で稼ぐ利益は少ない。
〇建築の絡まない1室や1棟のサブリースの場合
- サブリース賃料と実際の賃料の差額のみ
このタイプのサブリースは、賃料の差額のみが収益源です。例えば月5万円でサブリースをしそれを実際にお客様に6万円で貸すと1万円の利益になります。
1室1万円の利益で会社を運営していくには規模が重要になります。従ってサブリース戸数の多さがこのタイプの会社の生命線になります。
建物からコンサルするサブリースはお勧めできない。
建築工事からのコンサル的にかかわるタイプのサブリース業者は建築完了でその事業からの利益のほとんどを得るので、その後の運用に大きなインセンティブは働きません。
従って賃貸に強い力があるわけではないので、サブリース会社の都合で、家賃の減額請求、サブリース契約の解除などのトラブルが起きやすいのです。
もともと投資判断においては建物建築後のサブリース期間の運用収益がメインであるべきところですが、その辺りはポジティブにあまいな試算を説明して乗り切り、投資物件の建築をさせて、少ししたらサブリース賃料を下げるという手法で多くのトラブルが起きています。
そもそもサブリース会社が建築の中間に入ることで建築費も高くなるのでこのタイプのサブリースはお勧めできません。
この問題はサブリース本質的な議論から外れますので、この位にしてサブリース契約そのものについて解説したいと思います。
サブリース契約は「借主=サブリース会社に有利」な借地借家法の保護をうけてしまう。
サブリース契約においては貸主は我々投資家(副業の方がほとんどだと思います。)借主がサブリース会社(不動産会社でその道のプロ)になります。
これだけでも借主が有利なのですが、更に借地借家法の借主保護の精神によってより借主の不動産会社が有利になります。
普通の賃貸借では貸主が不動産賃貸事業者(個人でも)で、借主は私人の場合がほとんどな為、借主保護でいいのですが、そのままサブリースに当てはめているので、サブリースでは知識、ノウハウ量の逆転現象が起きてしまいます。
借地借家法が適用される事による我々投資家のデメリットは主に2つです。
- 契約の定めに関わらず出来る賃料減額請求を定めた借地借家法32条
- 貸主からの解除が困難な借地借家法28条
この二つによってサブリースの貸主は常に法的に弱い立場い置かれてしまいます。
「30年賃料保証」の契約は法律的に効果はありません。(法32条)
借地借家法第32条を抜粋すると、「建物の借賃が、経済事情の変動により不相当となったときは、契約の条件に関わらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない特約がある場合には、その定めに従う」」と規定されております。
重要な部分に赤線を引きましたが、つまり「契約条件に関わらず」とは、契約書になんて書かれていても賃料の増減が出来るという意味です。従って契約書に「30年賃料保証。賃料は変更できないものとする」となっていても、その賃料はいつでも減額請求できる事が法律で決められています。
更に不利な事に増額しない旨の特約は有効ですが、減額しないという特約も効力を発揮しない事が法律に書いてあります。
この規定によってどのような事が想像できるでしょうか?
サブリース業者の交渉としては下記の様なステップになると思います。
こうなると管理もままならないので建物がどんどん価値を失っていきます。困りはててサブリース賃料の減額を受け入れざるを得なくなっていきます。
借主(サブリース会社)に有利なサブリースの解約条件!借地借家法28条の恐怖
賃貸借契約は借主からの解約は比較的簡単に出来ますが、貸主からの解約は借地借家法28条によって非常にハードルの高いものとなっております。
借主(つまりサブリース会社)からの解約は契約の定めにもよりますが、期間を定めて予告すれば出来てしまう事がほとんどです。そして契約を超える法律の強硬的な定めもありません。
一方貸主からの解約は「正当事由」が必要とされ、とても厳しく制限されています。正当事由には以下の様な項目があります。
- 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
- 建物の・現況・利用状況
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
- 解除料や立ち退き料の支払いの申し出(効力少)
しかしながら、判例が示す通りほぼ認められることはありません。解除料を支払えば解約できるように思えますが、金銭の給付はそれ程重要と考えておらずあくまで、「借主を追い出すほどの理由が貸主にあるか?」で判断されます。
一般の居住している人の保護も目的をしている借地借家法ですが、住んでいないサブリース会社にもこの保護が適用されてしまうので、解除は非常に困難です。
売却する事になってもサブリースの解除は困難。よって売値が安くなる!
サブリース中の不動産を売却する事になっても、このサブリースは足枷になります。
サブリースは実際に住むお客様に貸す賃料とサブリース賃料の差額で利益を出していますので、実際の賃料より減額された収入しか入ってきません。
収入が減るので当然利回りに影響が出て、利回り下がってしまいます。
そこでサブリースを解除して、実際に住んでいるお客様から直接賃料をもらことで収入を増やして利回りを上げて高く売却しようとしても、解除が出来ないのです。売却は正当事由としては全く認められません。
違約金を支払って解約しようとしてもそれは高額になり、利回りが上がって高く売れる分の利益は全てサブリース会社に違約金として持ってかれてしまいます。
よってサブリースを継続したまま、サブリースの賃料で算出される利回りで安く売却するほか手段がないのです。
この点においても解約が容易に出来ない法28条は不動産投資の大きなデメリットの働きをします。
デメリットの大きさを理解してサブリースを判断してください。
不動産投資を考えた時、説明した通りサブリースにはデメリットがあります。
サブリース会社が30年間倒産もせず健全で、当初の約束を守ってくれるのであれば、安定した不動産投資が出来ます。
しかしながら、30年後の世界が想像できないし、1企業の30年後はもっとわかりませ。昨今は「賃貸住宅管理業者登録規程」および「賃貸住宅管理業務処理準則」の改正等国も改善しようという方向性は出ていますが、不十分です。
この事を前提に説明したデメリットと合わせてサブリースについて判断してください。
このサブリースと家賃の保証会社による保証は混同しやすいので、こちらの記事を参照ください。
不動産投資のリスクを劇的にヘッジする家賃保証について!