不動産投資をする際に法人化するか否か迷う事があるともいます。インターネットで調べてみると「年収900万円が法人化のタイミング」や「税率が変わる収入になったら法人化」等の見出しの記事を見ることが出来ます。
これら記事は「税率」を大きく取り上げていますが、我々の気になるところは「差額」つまり得する金額です。不動産投資によって給料と合わせた収入が900万円で法人化した時に法人化した場合と法人化しなかった場合で税額が大きく変わるのでしょうか?
不動産投資を始めて、税率が変わるタイミングまで待ってから法人化して果たして大きなメリットはあるのでしょうか?
既に不動産投資を始めている方は、年収900万円になったら法人化!
収入が900万円と言われますが、これは課税所得が900万円という意味で、税込み年収(給料額面)が900万円ではありません。
下に年収から基礎控除と社会保険控除を控除した課税所得から概算の所得税額を一覧にしました。
課税所得が870万から950万円(=税込年収が1300万から1400万)に上がる時に、課税所得900万円の壁を突破し、税率がいきなり23%から10%もあがって33%になっていることが分かります。
税込年収 | 課税所得 | 所得税率 | 所得税額 |
400万 | 170万 | 5% | 10万 |
500万 | 240万 | 10% | 15万 |
600万 | 300万 | 10% | 20万 |
700万 | 370万 | 20% | 30万 |
800万 | 450万 | 20% | 50万 |
900万 | 530万 | 20% | 60万 |
1000万 | 610万 | 20% | 80万 |
1100万 | 700万 | 23% | 100万 |
1200万 | 780万 | 23% | 120万 |
1300万 | 870万 | 23% | 140万 |
1400万 | 950万 | 33% | 160万 |
1500万 | 1000万 | 33% | 190万 |
この段階では支払う税額の方は劇的には上がらず20万円増えるにとどまっていますが、ここから不動産投資の規模を拡大していった場合、
法人税の実効税率が20%と言われているので、この33%と20%の差がだんだん効いてきます。
不動産投資規模が大きくなったら法人化がマストです。
「不動産所得の部分は法人化して法人税の実効税率20%の適用を受け、個人の所得と合算しない事で、課税所得を下げて累進課税による高い税率(33%、45%)を受けないようにする。」
例を用いて効果を見てみましょう。
●給与収入1400万円 不動産収入 100万円の場合
①法人化しない場合
年収 1500万円 所得税額 190万円(税率33%)
②法人化した場合
給与収入 1400万円 所得税額 160万円(税率33%)
法人収入 100万円 法人税額 20万円(税率20%)
合計税額 180万円
法人化した方が10万円税金の節約になります。
これが課税所得900万円から法人化するメリットと言われる根本です。
もし法人化せずに不動産投資を既に始められている方は課税所得900万円をいい機会ととらえて法人化する事をおススメします。
途中で法人化する為には不要なコストがかかる。
これから不動産投資を始めようと考えている方は最初から法人化がおススメです。但し不動産投資としてマンション1戸だけ持つという不動産投資家の方はメリットが受けられないので法人化せずに事業をした方がいいでしょう。
途中で法人化すると不動産を個人から法人へ譲渡する経費がかかる
個人と法人は完全に別人格です。従って個人で持っている不動産を法人をつくって法人に移す場合、自然には移りませんので譲渡によって所有権を移転する必要があります。
譲渡が伴うと様々な経費が掛かります。
- 所有権移転登記の登録免許税
- 司法書士の手数料
- 印紙代
- 不動産取得税
その不動産に対する支配や決定権は何ら変わりないのに、これらで1物件につき30万円位の経費が掛かります。複数の物件を持っていた場合は30万円×物件数なのでかなりの経費がかかります。
これは最初から不動産投資規模が大きくなっていけば法人化が得と分かっているのですから無駄な経費です。
最初から法人化して不動産投資を始めればこの様な無駄な経費はかかりません。
途中で法人化するとローンの借入人名義も変更になる
借入をして不動産投資を行う事が多いと思います。物件の名義が変わりますので借入金融機関に相談をする事が必要になります。
ほとんどの銀行が借入人を法人にして、法人設立者が連帯保証人なるよう変更を求めてくると思います。よってここでも余計な経費と交渉が必要になります。
又、この様なローン期間中の変更を認めない金融機関もあると思います。
ローンの変更手続きなども煩雑なので最初から法人化して始めた方がいいですし、規模拡大の時も事業として不動産投資行う法人の方が借入しやすいです。
不動産投資を始めるなら、最初から法人化しましょう。
不動産投資においては法人化する事によるメリットは大きいです。本記事で記載してきた所得税の面でもメリットは大きい事はお分かりいただけたと思います。
そして途中で法人化すると余計な経費が掛かります。
更に法人化すると経費の面、ローンの借りやすさの面でもメリットがあります。
不動産投資の法人化のメリットを記載した記事があるのでご参照ください。
副業で不動産投資をやるなら法人設立!メリット、デメリットとは?
最初に提示した表から漏れていますが、課税所得が1800万円を超えると税率は40%と実行法人税の倍に、更に課税所得が4000万円を超えると税率は45%になります。この様に実行法人税率と所得税率の差はどんどん広がっていきます。
この事は今、現時点で或いは不動産投資を始める段階で分かっているのですから、それに向けて準備をする事がおススメです。
最後にデメリットも記載しますと、法人の設立費用がかかる事と利益が出なかった場合でも7万円の税金がかかる事が等がありますが、不動産投資を身の丈に合った規模で行っている場合、キャッシュフローは多少マイナスでも利益が出ない事はほぼないですし、設立費用は得られるメリットに比べれば費用対効果は大きいと思います。
是非最初から法人化して不動産投資を始めて頂ければと思います